「でもこれ、みんなの前でいきなり呼ぶのは抵抗があるよ……」


高校って、そういうところだ。


男の子はみんな名字で呼ぶわたしが、急に槙十、なんて呼んだら、絶対何かあるんじゃないかって勘ぐられる。


『たしかに……俺もそこまで勇気ない。じゃあ、電話とメールの時だけとか?』

「……そんなに電話もメールもしてくれるの?」


メールは今までも何回かしたけど、電話は花火の時っきりだったはず。


『……弥白がイヤじゃなきゃ』

「イヤじゃないよ! むしろ嬉しいよ!」


『……っ……ハイ決まりー! じゃあ、そろそろ切んね。おやすみ』

「わかった、おやすみ」


プツッ……ツーツーツー


電話が切れた証拠の音まで、しっかり聞く。


神林くん……ううん、槙十。


わたし、槙十が好きだよ。

大好きだよ。


さっきまでわたしと槙十をつないでいたケータイをぎゅっと両手で握りしめる。