「言いたいこと? なぁに?」


『笠原、なんで兄貴のことは湊さんって言って、俺のことが神林くんなんだよ』

「えっ……だって、わけないとごっちゃになっちゃうじゃん。それに……」

神林くんは、神林くんで、呼び慣れてるんだもん。


今日、呼び分けをするためにちらっと槙十くんとも言ったけど。


『槙十』


電話越しの、ちょっといつもと違う声が耳元に届く。


これは……って、呼べ、って、こと?

「……槙十くん?」


『呼び捨てがいい』

「…………槙十」

『ん』


「えっちょっとなんか恥ずかしいよ今さらだし! なんかわたしだけ……ずるい! じゃあかんば……ま、槙十も呼ん」

『弥白』

「えっ」

『弥白、だろ? 笠原の名前』

「は、はい……」


たぶんこれまでで史上最強に私の顔は真っ赤だと思う。

いや、実際にはそんなに顔が赤くなるたちじゃないから見た目にはわかんないかもしれないけどってじゃなくてそんなことはどーでもよくて!


ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁ


そりゃさすがに下の名前も覚えてくれてるだろうなとは思ってたし好きな人に下の名前を呼ばれる妄想を16の女子高生がしないはずもないんですけれどもっ……これはっ……。