「もしもし?」


『あ、笠原?』


神林くんからの電話だった。


『ゴメン、なんか、電話したくなった』

「えっ、いいよ、ありがとう。……今日、ほんとにごめんね? 湊さん、なんか言ってた?」

『いや……。笠原、大変そうだから、お前が支えてやれとか言われた』

「あははっそればっかり! ほんと、神林家、楽しい人ばっかりだね。お姉さんにも会いたかったな~。おばあさんも、ちょこっと挨拶しただけだったし」

『そのうち、会ってみてよ。姉貴が間違いなくウチの影の支配者だから。ちなみにばあちゃんが黒幕』

「ふはっ、何それ。……また行きたいな」

『来いよ』


「ん。あのね、わたし、ほんとに、いつも家でひとりで。だから、神林くん家みたいなの、すごくうらやましい」

『……そぉか』

「お母さんもお父さんも仕事三昧で、お父さんはほとんど帰ってこないし。これ……弓美にも言ってないんだけど、うちの両親、とっくに離婚しててもおかしくないんだ」

『うん?』


「いつも、言い争ってるのはお父さんとお母さんだったの。わたしが小学校高学年のときくらいからかな。わたしは、2人の怖い顔じゃなくて、喜んだ顔が見たくて、勉強とか、すごいがんばって。でも2人とも、それぞれ仕事に没頭していって……」

『そう、なんだ』

「離婚するといろいろめんどくさいし、わたしがいるからけっきょくしてないみたいなんだけど」

『うん』