わたしが二人の男の人に挟まれ、しかもその二人が頭を下げたことでびっくりしたのか、お母さんが少し冷静になった。


神林くんが、わたしの肩に手を置いてくれている。

こんな時なのに、なぜか大谷さんに同じことをされたのを思い出した。


……全然、違うけど。


「なんなの? あなたたち」

「俺……僕、神林槙十って言います。笠原さんのクラスメイトで、あの、いつもお世話になっていて……あの、今日! 笠原さんが夕飯ひとりで食べるって言ったから、家に食べにきたらどうかって、僕が誘ったんです。家、大家族で、いつもご飯にぎやかだから……。あ、で、今、兄の車で送らせてもらったんですけど」

「勝手な真似をして、ご心配お掛けしました」


「弥白、そうなの?」

「う、うん……」


「あのね、わたしは弥白に優秀な女性になって欲しいと思ってるの。そのためには今のままの成績じゃ通らないのよ」

お母さんは誰とも目を合わさずに淡々と述べた。


「だから、あなたたちと遊んでる暇はないの。今回のことは過ぎたことだからもういいことにするけど、二度と弥白を振り回さないでくれる?」

夜なのにメイクの崩れていない、鋭い目が、今度こそ神林くんとお兄さんををとらえる。


「ちょっお母さんそれは違うよ! わたしが行きたいって思ってついていったんだし、すごく良くしてもらったし、楽しかったし、こうして車で送るまでしてくれて、神林くんたちは何も悪くないんだよ! わたしがちゃんと、断ればよかったの、わたしがちゃんと、せめて、お母さんに連絡を入れてればよかったの」


「弥白、中入りなさい。どうぞ今日はこのままお引き取り下さい。近所迷惑ですから」

「お母さん!」