パシン!!!
あーもう。
だから、嫌な予感が、したんだ。
濃紺のメタリックなワゴンが、わたしの家の門から少しずれたところに停車する。
車のエンジン音を聞きつけたのか、家からお母さんが出てきて……わたしを見るなり、頬をぶってきた。
「こんな時間まで遊び歩いてたの!? 信じられない! あんたテストだって近いでしょう!?」
「ごめんなさ……」
なんで。
自分が仕事で忙しい時は、わたしのことなんて気にかけもしないクセに。
今まで散々ほったらかしにしといて、ちょっと成績が下がった瞬間、これ?
心の中では思っても、外で言い合うわけにもいかないから、わたしは謝るしかない。
「これ以上勝手なマネするようなら成績関係なく部活も辞めさせるわよ! 毎日家庭教師呼んで逃げられないようにしてあげるから!」
「ごめ、なさ……あの、とりあえず家の中で……」
やばい、お母さん、こうなると止められないんだよね……。
「すみません、笠原さんのお母様ですか」
突然、すっと横に、お兄さんが立ってくれた。
「は?」
「初めまして、笠原さんのクラスメイトの神林槙十の兄で、神林湊と申します。娘さんのお帰りを遅くさせてしまって、すみませんでした」
お兄さんが、お母さんに頭を下げた。
「すみませんでしたっ」
反対側の隣にはいつの間にか神林くんが立っていて、神林くんまで頭を下げてくれた。