「今日、誘ってくれてほんとにありがとう! すごい楽しかった! 神林家にいたら毎日笑いすぎて腹筋が筋肉痛になりそうーあと顔筋も!」

「いや~毎日めちゃくちゃうるさいよ? 俺は静かな空間が欲しい……」

「あははったしかに、あの中で勉強はできないかなぁ」

「するけどね。意地でも。まぁ最近は兄貴も姉貴も家にいないからずいぶんマシだし、俺も家以外で勉強することもあるけど」

「おいこら、俺はそこまでうるさくないだろ。うちでうるさいのは圧倒的に女性陣だよ」


すかさず運転席からツッコミが入り、また3人で笑う。


「あー中間テストもうすぐか~」

2期制だから、後期は10月から始まって中間テストは12月になる。


「テスト終わったらもう今年も終わるんだな」

「早いー!!」

「おいおいテスト終わったら終わりじゃねぇよ、大事なイベントあるだろ?」

ちょうど赤信号で車が止まって、お兄さんが振り返った。

「ク・リ・ス・マ・ス♪」


わたしと神林くんは顔を見合わせる。


「ちょーっとお前らほんとに付き合ってないの? 俺から見たら普通にカップルなんですけど? なんなの? 目の前にチャンスがあって動かないのか槙十のヘタレ! あーどうせ俺は今年もクリスマスはバイトだよ!」

「ちょっ、兄貴、信号変わってる!」


タイミングよく信号が青に変わりお兄さんは前を向きなおしたけど、車内にはビミョーな雰囲気が流れる。


いやいやいや、神林くんと……カ、カップル……とか!

恐れ多いです!

神林くんだってずっと否定してたし!

今日はたまたま、ひとりでご飯しようとしてたら誘ってくれただけだし!


「あれ、誰かバイブなってない?」

一瞬の沈黙を破ったのはケータイの振動音だった。


「あ、わたし……電話だ」