神林くんのお母さんは小柄な人だけど、お喋りでくるくる表情を変えながらテキパキ働く、なんだかかわいい人だった。

店頭に出ているおばあさんとも挨拶だけは出来たけど、夕食時だから忙しそう。


階段を何往復かして食事を運び終わると、ちょうどお父さんとお兄さんも帰ってきた。


「ただいま~」

「あれっ一緒だったの」

「おー帰りの電車で一緒になった」


すごいすごい、なんだか「家」って感じ!

うちはいつも誰もいないのが普通だから、すごく変な感じがする。

親戚で集まるお正月やお盆みたいな、なんだか特別な感じ。


「あれっ、お客さん?」


お兄さんのほうが先に私に気が付いた。

私服だから、大学生?


「あ、初めまして、お邪魔してます! 神林くん……あ、槙十くんのクラスメイトの、笠原弥白と申します」

そういえば(あたりまえだけど)みんな名字は神林なんだと気付いて、槙十くん、と言ってみた。

槙十くん、だって!


「あ、ども、槙十の兄の湊です。ってお前、何!? 彼女!? 彼女なの!?」

「ちがっ! もー彩佳と同じ反応すんなよー!」


じゃれてる神林兄弟の横で、穏やかそうなお父さんとも挨拶する。


「いらっしゃい。うるさい家だけど……夜ご飯食べてくのかな? ゆっくりしてってね」


うーん、お兄さんの方がお父さんに似てるな。

神林くんは半々くらい。