「へっつに誰にへもするわへじゃ……ないもん!」


ガラガラガラッ


わたしがそう切り返したまさにそのタイミングで、準備室から先生が出てきた。


「はいはーい、じゃれてるなら帰ってくださーい、ってか下校時刻でーす」

「じゃれっ……」


神林くんがぱっとわたしの頬から手を放して、そのまま黙々と片づけを始めた。


ななななななんだったの?



そのまま片付けが終わって、流れで一緒に駅に向かって、電車を待ってても、ほとんど話せなかった。


普段話し好きの神林くんがむすっとしてると、わたしはどうしたらいいかわかんない。


え……もしかして怒ってるのかな?

これはやっぱり、わたしが怒らせた?

イヤじゃないって言ってたけど、ほんとはイヤだったんじゃあ……。


あ、謝らなきゃ……!


右側に少しずれて立ってる神林くんの方を、チラっとうかがう。


ケータイいじってる……よし、

「あの、神林くん……さっき、ごめんね?」

「ん?」

「怒ってる、よね?」

「えっ」

「えっ」


『6番線に、電車が参ります。危ないですから、黄色い線の内側まで、お下がりください』

『6番線17時33分発、快速……』


ホームがうるさくて、電車に乗るまで喋れない。


え? んん?

怒っては、ないのかな?

じゃあなんで喋ってくれないの?