足音は消せないから、さりげなく、後ろを通り過ぎるふりをして……手を伸ばす。
あとちょっと……あと3センチ……。
「うっひゃぁあ!!!」
神林くんの無防備な左の首元に水で冷え切った手をつけると、予想以上の反応が返ってきた。
「つめってぇぇぇぇええ! ちょ、おまえ何すんだよっ!」
「あっははは! びっくりした? だいせいこーう☆」
うわーーーーっ神林くんにドッキリしかけちゃった!
「こんにゃろ、びっくりして間違えたらどーすんだよ!」
「大丈夫だよー、ペンが離れてるとき狙ったもん」
「そんな緻密にいたずらすんな!」
やばい、怒ってる神林くん、かわいい!
「あははっ、ほらほら、がんばって下書きまでやっちゃわないと」
「もーやだ怖い……またやんねぇだろうなっ?」
「しないよー、ほら、あと15分で下校しないとだからがんばって」
「うー……笠原ここ座ってろ。目の届かないとこ行くな」
どきん。
あー、なんでそんなにカッコイイのかな。
目の届かないとこ行くな、なんて。
シチュエーションが違ったらドキドキのセリフだよ?
「だーもう、さっさと座れって」
「はーい」