「で、一応ちゃんとしたパーティーだから、いったん帰って着替えて移動時間も考えて、早退。せっかくの機会だから来なさい。久々だけど、マナーなんかは大丈夫ね?」
「う、うん……たぶん」
きゅ、急展開すぎて話についていけないけど……なんか、すごいこと、だよね。
世間は狭い、って言葉はこんなときのためにあるのか。
でも、明日かぁ。
明日の最後の授業、美術なんだけどなー受けたかったなー。
まぁ、仕方ないか。
「へぇ! そんでもう帰るわけ」
翌日、朝のうちに先生に事情を話してあったわたしは、早退間際に弓美にだけ事情を説明して荷物をまとめた。
「うん。制服で行くわけにもいかないからねー」
「ちなみに、なんて人?」
「え? ああ、クリエイターさん? えっと、大谷史哉さんって人」
「おおたにふみや……? 知らんわー」
「そりゃ、クリエイターさんの名前なんか普通知らんでしょう。わたしだってよく知らないもん。業界ではカリスマ的存在だって言ってたけどねー」
その、大谷さんがわたしの絵を見て会いたいと思ってくれたことは、すごく嬉しい。
でも正直、美術の授業は出たかった。
だって、美術の時間なら、神林くんの近くに座れることもあるんだもん。
後ろ髪をひかれる思いで弓美に手を振り、教室を出る。
残念ながら神林くんの姿はなかった。