ガチャリ。


あれ、珍しい。


寝る前の一勉強中、玄関の扉が開閉する音が聞こえてきた。

まぁ、十中八九お母さん。

お父さんは、都心に泊まり込みも多いし。


「ただいま。弥白、起きてる?」

「起きてるよ。おかえり、早かったね」


「ねぇ、弥白、明日早退できる?」

「へ、早退?」

「うん、早退。五時から品川で、私のお世話になってるクリエイターさんの授賞パーティーがあってね」

「はぁ」


「その人が、あんたに会いたいっていうのよ」


「は、なんで!?」


「この間、入賞したって言ってたでしょう、あんたの絵。あれの審査員にそのクリエイターさんがいて、えらく気に入って名前を覚えててくれたみたいなのよ。ひょんなことから私の娘だって知ったらしくて」


「えぇぇぇぇ!? どんなつながり!!!」