「もらってきたのはあたしですから」

俺が出しに行こうかと言った陽平に、千広はそう言って断った。

自分で出すと言うのは、言い訳だ。

本当は、陽平に抵抗したかったからだ。

そもそもの発端――全てが始まったのは、陽平だった。

彼は自分の目的を果たすために千広の戸籍を盗んで、千広を自分の妻にした。

目的を果たしている間、お互い恋に落ちてしまったのが唯一の誤算だった。

目的を果たした陽平は、千広との離婚を決意した。

全ての始まりは陽平だったのだから、全ての終わりは自分がしたい。

そう思って、千広は1人で離婚届を出しに行くことにした。