「新ちゃん!」


シートの空いてる部分に新ちゃんが座った。

ほんのり香る香水と意外にがっちりした腕の筋肉に…、変に意識しちゃう。


出会った頃より伸びた髪が顔にかかって、新ちゃんの綺麗な顔が見え隠れしていた。


「何やねん……夏休みの前半は無理みたいに言うとったくせに…」

「あれは……もう用事済んだから来たんやもん」

「ふーん……」




プールの水がちゃぷんって揺れて乾いたプールサイドに跳ねた。

いつもならこんなに静かな事ないのに何もからかってこないなんて…。


「…新ちゃん……機嫌悪い…?」


前髪に隠れた目を覗き込んでみた。

「んー…この髪邪魔やね……結んであげる」



抵抗してこない新ちゃんの髪をすくって耳上の髪だけ結んだ。

少し色が抜けた髪に私のピンク色したゴムが目立つ。


「…おい華凛ー……俺殿様じゃないんやけど…」

「フフフッ、ええやん!…めっちゃ可愛い!」





あっ……



やっと笑った…。







今日会ってから鼻先で笑うみたいな笑い方だったから。

でも…、今やっと笑った。





機嫌……直ったのかな…。