さて、武器は準備出来たけど、まだ不安はあるよね……
 なにせ、相手は吸血鬼なんだから。
 そんなものを相手に戦うならば、何か身を守る物も必要になるはず。
 そう、防具だ。
 ヴァンパイアは、確か日光に弱いんだっけ?
 ……没。
 そもそも今が夜である以上は日光なんてどこにも望めないし、しかもたとえ日光と同質の光を発する照明を準備出来たとしても、その光をアレが嫌がるとは思えない。
 もしかしたら、吸血鬼って奴はただの暑がりなだけなのかも。
 じゃあ、流水で部屋の周りを囲んでみる?
 確かヴァンパイアは、流水を越えられないという話を聞いた事があるけど……しかし、塩素漬けの水道水でも効果があるものなんだろうか。
 あ、ヴァンパイアは鳥やコウモリみたいな空を飛ぶ生き物に変身すれば、流水を越える事が出来るんだっけ?
 ……没。
 私の独力でこの部屋を流水で囲むなんて物理的に不可能だし、もし何らかの方法で実現しても、アレは平気な顔で部屋に侵入してくるに違いない。
 もっと効果が強くて、即効性のある物が良い。
 私は、前に映画で見たようなホラー映画の哀れなやられ役と、立場は変わらないのだから。
 普通の人間に出来る事と出来ない事。
 分を弁えなければ、奴等はきっと私を糧と認めて襲いかかって来るに違いない。
 そうなると──うん、これは使えるに違いない。
 …………。
 大樹、ちゃんと持ってるじゃないの。
 この結界があれば、この部屋の安泰は約束されたも同然な訳で。
 いやいや、今はのんびりしてる場合じゃないよね。
 まずは今夜を無事に生き延びる事、それが最優先。
 私は手早く結界を設置し、早速起動してみた。
 特有の異臭が鼻をつく。
 ……これで安心。
 これならいくら吸血鬼と言えど、迂闊にこの部屋には入れない──はず。
 勿論、結界が利いている間はの話だけれど。
 防具か……
 一般的に、武器より防具を作る方が難しいと聞く。
 殺傷武器の代表として銃を挙げる事が出来るけど、それを防ぐ装備は銃ほど小さく作れないように。
 それでも私は大樹の部屋の押し入れから、吸血鬼に絶大な効果を発揮する結界を用意してしまった。
 ……ほんと、凄いぞ人類の英知!
 伊達に地球の覇者を名乗っちゃいないよね!