「血を吸う鬼。うーん、鬼ってのは誇大表現が過ぎないか? まあ、確かに吸うけど」
 大袈裟、紛らわしい。
 正解。
「空は──飛ぶよな。あんまり高くは飛べないと思うけど」
 まあ確かに。
 正解。
「影になったり霧になったり他の生き物に変身したりもしないよな。窓の隙間くらいからは入ってくるだろうけど」
 うん、明日からは窓を閉めて寝よう。
 正解。
「川を越えられない道理は無いよな?」
 まあ、飛べるから川なんて関係無いよね。
 正解。
「そういえば、血を吸う鬼の事件の記事は新聞に載ってなかったな」
 うん、それは誤算。
 前は新聞なんて読まないって言ってたから、すっかり油断してたよ。
 もちろん、そんな猟奇殺人は起きてない。
 おまけで正解。
「そう言えば、むかし俺、亀を飼ってたんだけどさ……」
 ……吸血鬼の子供でも大量に湧いたのかな?
 赤くて細くてうねる奴。
 分かりにくいけど、まあ言いたい事は分かるから、これもおまけで正解。
「知ってるか? 吸血鬼って雌だけなんだぜ?」
「あ、そんな事まで知ってるの?」
「雄は血を吸わないし、雌も産卵期にしか吸わない、そうだろ?」
 仲間を増やすために血を飲む悪魔、とか。
 血液は動物性の高蛋白、普段は植物から得る水分や僅かな栄養素で十分生きてゆける存在なんだよね。
 ……闇夜の“女”王の異名は伊達じゃない。
 正解。
「っつー訳だ。まだ何か俺から言うべき事はあるか?」
「おみそれしました、私めの完敗にございます」
 ははあ〜、と私は大袈裟にひざまづいてみせた。
 うん、本当に完全にバレちゃってるみたいだから、もういいや。