「それだけ、あいつの心が綺麗だったんだな」

「ふふっ、ばれてたのね。そうよ。あれだけ綺麗な心と気を持った子、久しぶりに見たわ。今まではあの子、辛い思いをした事の方が多かっただろうけど、あの心と気を持っていたら自然と周りが付いてくるわ」

「辛い思いって、そんなに酷いモノだったのか?」


ロベルトだって興味を示してるじゃない。


心の中では文句を言うけれど、ロベルトに言ったら、また面倒な事になるし言わないでおこうかしら。


それに、ロベルトも心なしか、嬉しそうだしね。


久しぶりに輝く瞳を見てそんな事を思う。


「ええ、あの子、小さい頃に父親を亡くしてるわ。それが原因で母親が精神が不安定になって、暴力を受けていたみたい。その後、母親は精神病院へ入院。今は叔母の家で暮らしてるわ」

「お前の心を読む力はかなりのモノだな。俺は其処まで分からねぇーよ。分かるのは今と言う時間から1日前後の記憶。閉ざしてしまいたくなる記憶なんかを読むのは俺には無理だ」

「そんな事無いわ。それに、心を読めて得する事なんて殆どないしね。この仕事をしているから要らないと思った事はないけれど」

「お前は謙虚だな。それにしても、実亜って名前、聞いた事があるな」


ロベルトは思い出そうと腕を組み、唸っている。


「此間、弓良って子が来たでしょ。実亜さんをいじめたいって願いを叶えに来た子」

「ああ、あいつか。あいつは狂ったような瞳をしていたな」


ロベルトは思い出したみたいで、組んでいた腕を解く。


狂ったような瞳......


確かにそうね。


人はあれほどまでに人を憎み、人の不幸を願うモノなんだと改めて思ったもの。