「だから局長、やめといたほうがいいんですよ」

「七丘、俺は今物凄く本気なんだ」

「局長って真面目な仕事一筋の人なのかと思っていました」

「俺もそのつもりできたんだが.....」

と、ぱくり、きれいにデコレーションされたトルテを口にする。

「‥‥‥‥」

「うん、おいしい」

七丘は満面の笑みで完食する。

一方ジスは、

「‥‥‥‥」

感動のあまりふた口目にいかないのだった。

さすがに魔女もそれには悪い気がしないのだった。

「....紅茶はおいしい。お菓子もプロ以上......」

ぼそりとつぶやいた末の言葉は、

「やはり俺の奥さんに――」


......


「局長、大丈夫ですか?」

「今さっき、彼女の笑顔を見たような気がしたんだが、」

「ふつーに褒めてりゃ外まで吹っ飛ばされることもなかったのに」

ジスはひっくりかえった変な体勢で木にぶつかっていた。

「そのうち木も怒りだしますから早く立ってくださいよ」

なんとか立ち上がって付いた土や砂、葉っぱを払い落とした。

「とりあえず仕事だけでも済ましておくか」

「地底のことなら遠慮しとくわよ」

魔女はきっぱりと断った。