「……何?」


雨上がりの放課後。

校舎は静まり返り、音楽室からは楽器の音色が聞こえ、
違う方向からは合唱部の歌声が聞こえる。
私は教室の中…

目の前には、名前も知らない男子が1人。
私達の間には
じめじめした空気が流れる。

私はこの感じを知っている…


「好きなんだ」


ほら。
やっぱりこれ。


「……誰かと間違えてない?」

「え?」

「私、あなたのこと知らないんだけど…」

向こうは驚いたように
目を丸くして、
ふと微笑む。

「そりゃそうだよ!話したの今日が初めてだし…」

「……そんなんでよく好きになれたね」


知りもしない誰かに
突然好きだなんて言われて、

しかも初めて話すのに…

男子はうーん…と髪を少し触る。


「俺さ…初めて咲ちゃん見たとき、一目惚れしちゃってさ」

「………」


男ってどうしてこんなにも単純なのだろうか?
一目惚れって…

それは"好き"に入るのかな?