「おーい!咲早くこーい!」
「ま、待ってぇー」
「置いてくぞー?」
「ええ!…やだやだ!行かないで!
今走るから」
「走るんなら最初から走れ!ばーか」
「ばかじゃないもん!」
え…
何これ。
なんでこの声…
「はぁ…はぁ…やっと追い付いたー…」
「おせえんだよ…まったく…ほら!」
「え…いいの?」
「嫌ならいいよ」
「嫌じゃない!嫌じゃない!繋ぐ!」
「…ん」
大きな手と小さな手
「お前…小さいな」
「しょうがないでしょ!子供なんだから!
咲だって大きくなったら
――くんよりも大きくなるんだもーん」
「ははっ」
くしゃっと撫でられて
怒る私…
でも頬は色付いていた。
それは走ったせいなのか
隣の奴のせいなのか
幼い私は分からずにいた。