古いこの一軒家で俺は産まれた。


有希。それが俺の作り手の名前だ。


有希の料理は旨かった。
特にカレーは絶品だ。


だが、有希のカレーを食べる事はもう叶わない。


今、俺の目の前にあるのは『カレーのような煮込み料理』と言えばいいのか。



俺は、人生で初めて選択ミスをしたのかもしれない。

あの時は、こいつなら大丈夫と思ったのに……


「さぁ!慶太!今日は、シーフードカレーだよっ!」

溢れんばかりのカレーが入った大鍋を持って、凜が微笑んでいる。


………勘弁してくれ。