「学級日誌!」

「はぁ?」

まゆをひそめる私。

橋口は後ろに倒れるんじゃないかというほどふんぞり返って、こういった。

「委員長の仕事じゃないのー?」

「…」

忘れていた。

まじか。

「代わりにやっといてくれたら…」

「嫌だ。俺、急いでるもん」

「ええええー、ケチぐち!」

「俺は橋口だ!」

「いいよ、俺待っててあげるから」

小学生のような言い合いをしている私たちに、思わず苦笑いする優也。

やっぱり優也は優しくてかっこいい。

ケチぐちとは大違い!

…と思っていたんだけど、

「小野~、今日ミーティングだって~」

「えっ、まじ? 聞いてねぇよ」

「先生呼んでる、はやく!」

友達の呼びかけに焦る表情を見せる優也。

申し訳なさそうに私の目を見つめる。

「はやく行ってきなよ! 遅れちゃうよ」

「えっ…でも」

「大丈夫! また今度一緒に帰ろう♪」

私が笑顔を見せると、優也も安心したように笑顔を見せた。

「サンキュー。じゃ、行ってくるわ!」

軽く右手を挙げると、優也は私に背を向けて走り去っていった。

優也を見送ると、私は教室に入った。

学級日誌か…。めんどくさいなぁ。

私は自分の席について、今日一日あったことを学級日誌にまとめていく。

めんどくさいといいながらも、実はこういう細かい作業が好きだったりする。

表にバーンと出るよりかは、裏でこちゃこちゃと地味な作業をするほうが好き。

結構私って、デキる女なのかもしれない…。

「意外と丁寧なんだねー」

「わっ!」

突然頭の上から声がして、私はびっくりして大声をあげた。

橋口が私の背後から覆いかぶさるようにして、学級日誌をのぞいていた。

なんだ、この距離。