「希美~」

「優くん!」

終礼の終わりを告げるチャイムが鳴ると同時に、

愛しの優也が私の教室まで迎えにきてくれた。

「わーい、来てくれたの?」

「だから会いに行くっつったじゃん」

そういって、私の頭を優しくなでる優也。

もう、かっこよすぎる!

「めっちゃ嬉しーい♪」

「俺も嬉しーい♪」

私が優也に抱きつくよりはやく、橋口が優也にだきついた。

「ちょっ、なにすんだお前!」

「優也愛してる~」

「きもっ! 愛してないしっ!」

ぎゃーぎゃーわめく優也と、キスをせがむ橋口。

地獄絵図…。

「てか慶太、お前希美にちょっかいかけてんじゃねぇだろうなぁ~」

「かけてるかけてる~!」

「かけてないから! 松下さん、ほんと怖いわ~」

すると優也は私の肩を抱き寄せ、橋口にこう言った。

「まあ仲良くしてやってくれなとはいいたいところだけど…」

へらへらした表情から、急に真顔になる優也。

「こいつにちょっとでもよけいなことしたら、

 俺、お前にタダじゃおかねーから」

「…優くん」

すると橋口は無言でうなずいた。そしていった。

「大丈夫だよ。俺には美幸がいるもん」

「美幸」。

彼の口から初めて美幸の名前を聞いた。

なんだかいつもと響きが違う。

すごく大切にしてるっていうことが声の雰囲気から伝わった。

こんなやつでもやっぱり大事にしようって決めた人がいるんだ…。

「ならいい」

にっと笑う優也。私の肩を抱いていた右手が、私の左手を包んだ。

「帰ろっか」

「うん!」

私は幸せで胸がいっぱいになるのを感じた。

「タダじゃおかねーから」っていってくれたこと、すごく嬉しかった。

靴を履き変えてさあ帰ろうというときに、橋口が私を呼んだ。