私は教室に戻って、自分の席についた。

とりあえず頭を冷やそう。

そういえば超失礼なこといったくせに、美幸に謝ってない。

「あああ~、もう~」

風船の中のガスがぷすぷすと抜けるような声で叫ぶと、

「なんかあったの? 委員長」

「なんか」の橋口がミルクティーとレモンティーを両手に隣の席についた。

「別に…。てか、美幸だったの?」

「あら。知らなかったかんじ?」

「うん。美幸ならもっといい人選ぶとか思ってたし~」

「…本人目の前でよくいえるよね」

私は大きくため息をついた。そして横目で橋口を見た。

「…」

ちょっとわかった。

美幸が橋口を選んだ理由(わけ)。

「あげる。これから迷惑たくさんかけるだろうから」

くったくなく笑ってミルクティーを差し出す橋口。

私は素直にそれを受け取った。

「…ありがとう」

両手で包むと、パックの水滴がひんやりと体温を下げていく。

混乱していた頭もすっかり冷えた。

「飲まないの?」

「いや、…」

なんだかもったいなくて飲めない、なんていえなかった。

でもこのミルクティーは家でゆっくり飲みたいと思った。

「あ、ミルクティーだめ?」

「ううん。大丈夫、好き」

「まじ? レモンティーのほうがよかったかな~」

そういって橋口はストローから口を話すと、

しげしげと自分のレモンティーのパックを見つめた。

「今からでも交換しちゃう?」

「…はぁ?」

「やだ! 間接キス~みたいな~♪」

「…」

前言撤回。

ちょっとじゃない。ほんのちょっと。

やっぱり橋口は橋口だ。

それ以上の何者でもない。

だけどちょっと気になったりする。

私はミルクティーを頬に押し付けて、目を閉じた。