「やったー! ザキさん一緒!」

私は「イェーイ!」とザキさんにハイタッチを求めた。

ザキさんは野球部副キャプテンで、七海の幼なじみだ。

ちょっぴり頑固だけど、寛容的で保護者的存在。

「あれ、あんまり来てないじゃん」

「だよね。てかまじでザキさん来てくれてよかった~」

「なんだよ、他にもいるだろ。クラスメイト」

「いるけどさ…。なんか隣の人、変な人だからさ」

「変?」

ザキさんは首をかしげた。

そんなやつどこにいるんだ、とでもいうように。

「あいつ。前から2番目の…」

「…ああ!」

私が指さしている方向に焦点を合わせるなり、

ザキさんはその指の先の男子へとかけよっていった。

「よう! 同じじゃん!」

「ああ、ザキじゃん!」

えっ? 友達?

私はザキさんの背中を追った。

ザキさんは頬をゆるめて、その彼の肩に手を置いている。

「ねぇ、誰なの?」

「お前知らないの?」

耳元でささやくと、ザキさんは拍子抜けた顔をした。

私の声を聞きつけて、こちらを振り向く彼。

「なんだ、ザキとは普通にしゃべるんじゃん」

「だって初対面だし」

ぶつぶつ文句をいうと、彼は小さく吹き出した。

「ははは! 人見知りなの? 

 俺は橋口慶太! けいちゃんって呼んでね♪」

「呼ぶか!」

思わずつっこんでしまった。

そんな私の様子を見て、腹を抱えて笑うザキさん。

「なんかいい感じじゃん、2人」

「どこが!」

「そう思うでしょっ」

私と橋口の声がハモって、ザキさんはまた笑った。

橋口までへらへらと笑う。

なにこれ。

私は呆れて、自分の席について、整理を再開した。