と、とりあえず違う話をしよう。



「何で私はここに連れてこられたの?」



『…………。』



良…?



『あ、そうか、誘拐したんだよな。俺ら。』



……誘拐…


まぁそうだけど…



『誘拐…。
……わりぃ。』


いや、いいっす。



なんか全然誘拐らしくないんで。



「…で?」


『あぁ…えっと…』



良には
思いを言葉に変換する
ための時間を与えないといけないみたいね。



『えっと…なんでだっけ?』


は?



『なんか総長の命令だったと思うんだけどな…』



もう いいです。



期待しませんよ、あなたには!



『わ、わりぃ…』



そんなシュンとされると気が狂いますな…



「いいよ。
じゃあさ。今の“劣華”の総長って誰なの?」



『……え…っと…』



もう いいです!


本当に期待しません!


どうやら良は相当頭がトロいようだ。




……私は気付かなかった。良に騙されていたことに。良は、思いを言葉に変換するのは苦手だけど頭はかなりいいことに。


良が私を守るために嘘をついていたことに。




「良。」


『何だ?』



「さっきさ。
“劣華”のこと懐かしいっていってたけど…どうして?」




『あぁ…。
俺と京。
前、“劣華”だったんだよ。』



え!?



「“帝峯”の前?」


『あぁ』



………わぁお。



…強烈な事実。




『良さん。』



聞いたことがある声がドア越しに聞こえる。



……何?



『何だ?』


『いや…なんか…
謝ったほうがいいって族の皆に言われたんで…』


『あ、あぁ。確かにな。
入れ。』




謝ったほうがいい?



『失礼します…』



そう言って入ってきたヤツは私を殴ったあいつだった。




「あ゛!」



『あ…美音さん!
さっきはすみませんっした!』



深々と頭を下げる男。



名前は、確か…



『蓮。
お前謝罪の気持ちが足りねぇよ。』



良がにやけながら言う。


Sやな!



『えっ…と…!
美音さん。この度は本当に…』



宮下 蓮。

もう いいです。


「許す。」


『まじっすか!
あざっす!』


てか
キャラ違くね?



『じゃ、許してもらえたところで。』



『ネコ被んなよ。』


あ、やっぱり被ってるか。
「何?ネコ被ってんの?」

『はぁ?
謝るときくらい被らねぇとな。』



………わぁお。


何?

良にもその態度なわけ?

『ねぇ!良さん!』


あ、一応良には敬語ね。


敬語かどうかは微妙だけど。


『じゃ、族の皆のとこ戻ります。』



そう言って立ち去って行った…



なんなんだ…


“帝峯”自由だな!



『皆仲いいからな。』



「いやいや。
だって
人質とっておいて?
総長ヒステリックおこしておいて?
“皆のとこ戻ります”って何!?
皆仲良く集まってんの?」



『あ…集まってるんだろうな。
バイクの点検とか。』


呑気っ!



『多分ヒステリックの件はまだ伝わってないんだと思う。
伝わったら皆総長のとこ行くしな。』