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うっすら目をあける。
目をあけると見たことのない風景が広がる。
「……どこ?ここ…」
私…
そうだ、殴られたんだ。
腹部をさする。
痛みはもう感じなかった。
私はベッドに寝かされていた。
ご丁寧にどうも……。
そうするとここは…アジト?
私が寝ていた部屋には誰もいない。
ずいぶん不用心ね。
……翔太心配してるかな。
ゴメンね。
「……帰らなくちゃ。」
私はベッドから出ると、ドアのほうに駆け寄る。
そっとドアに耳をつける。
………微かに話し声が聞こえる。
今、出たらまずいか……。
どうしよう?
それより、翔太は私がいないことに気付いてるのだろうか?
……今、何時ごろ…?
制服のポケットを探る。
携帯…携帯。
……あった!
携帯を取り出して時間を確認する。
19時46分…。
遊ぶ相手がいない私にとっては家にいて当たり前の時間…。
着信がある。
……翔太からだ。
15件!?
多すぎだよ…。
と、とにかく急いで電話を…!
翔太の欄を選び、発信ボタンをおす。
プルルル
お願い…、はやく出て!
……ちょっと待って…。
どうして私の携帯は取り上げられてないんだ?
制服のポケットだなんて取り上げやすい場所にあるのに…?
………わざと?
私に電話をかけさせるため…?
なぜ、私を誘拐した…?
………まさか。
私の考えていることが事実ならば。
急いで電話をきる。
いけない。呼び出しちゃいけない。
助けにきてもらってはいけない。
もし私が。
翔太、あるいは誰かを。
おびき寄せるためのエサならば。
それなら私を誘拐した理由も納得できる。
じゃあ、私に出来ることは。
黙っていること。
ヤツの思い通りになってたまるかっつ〜の!
………でも、たった一人で。
私を拉致するとか、翔太をおびき寄せようとかするだろうか?
……なんだか組織的な何かをかんじる。
……族か。
でも、なぜ翔太?
いや、翔太と決まったわけではない。
昨日、陽といるところを見て彼女的なやつかと勘違いしたのかもしれない。
……とすると…劣華?
……それなら説明がつく。
私は族同士の争い…抗争に巻き込まれた?
なんで私が…。
私は、もう。
こっちの世界とは関わらないと決めたのに。
パタパタパタ
何人かの足音が聞こえた。
……来る。
私は急いでベッドに入り直す。
寝たフリして情報を聞いてやる!
ガン!
ドアが勢いよく開いた。