『………美音ちゃん。』



重い口をようやく開いてくれた?



『………俺ね?
兄貴から裕太さんの話も聞いてたんだ。』



………え?



『今思えば…おしゃべりな兄貴だったよ。
殴ったあとはいつも話を聞かせてくれた。

……“くれた”なんておかしいかな?
聞かされた。のほうが正しいかな?』



………殴られたあと…。


陽の暗い過去。




陽は明るく言ってるけど。
どんな気持ちで高橋翠の話を聞いていたんだろう。




『……裕太さんの話を聞いてるうちに……。

裕太さんのファンになってたよ。』



…………は?



「……で?」


『え?』


「だから何よ?
私は裕太が生きてるか聞いてるのよ」



『美、美音ちゃん…』



あたふたした様子の陽。


……教えられないの?



……それって…死んでるから?


もう……いないから?



「やっぱり。裕太なんて
もう…いないんじゃない。」



じゃあ。


それなら。



「期待させるようなこと言わないで!

裕太は死んだの!

私はもう受け入れ…」



『姉貴!!』



言いかけた言葉を翔太に塞がれる。



『……そんなこと言うな。
姉貴……。
ムリするな。』



……ムリ?


ムリなんかしてない。


何言ってんのよ。



『姉貴。
確かにあの人は死んだかもしれねぇ。
………けどな。
生きてるって信じることも大事なんじゃねぇの?』



………翔太。