突然、後ろから抱きすくめられた。

振り払おうともがいても両腕ごと挟み込まれ身動きひとつできない。

背後から耳元に近づく息づかいを感じ、背筋が凍る。そして、アルコール臭いその口元から、ちよりさんの声が響いた。

「あなたとはうまくやっていけそうよ」


そう言うと、ちよりさんは私の頬にキスをした。



あっけにとられる私の手を取って、ちよりさんは歩きだした。

ちよりさんの歩みは速く、私は付いていくのがやっとだった。


100mぐらい歩いただろうか、ちよりさんは向きを変え、木と木の間を入っていく。

その奥に玄関があり、ちよりさんが先導してドアを開けた。