ちよりさんは画家だと言った。
そして、照れたように少し笑った。


その笑顔に腹が立った。

震災以来封印してきた笑顔を盗られたような気がした。


ちよりさんはまた立ち上がり、サラダと鶏の唐揚げを持ってきた。

でも、私にはそれを食べる気は端っからなかった。

それなのにちよりさんはサイコロステーキだとかピザだとか高カロリーの品を後から後から持ってくる。


私は一口も食べられず、箸を持つこともなかった。


でも、ちよりさんは私に「食べないの」とか「食べなさい」とか一言も言わなかった。

私が食べようが食べまいが、どうでもいい風に映った。

ちよりさんはいつもそうであるように、ビールを飲んでは鶏の唐揚げを食べ、更にビールを飲んではピザを口に運んだ。


親父と音楽の話で盛り上がり、ためらいもなく私を会話の中に引きずり込む。

私に求めた答は「はい」か「いいえ」だけだったけど、頷いたり首を振ったりする自分が軟弱っぽくて嫌だった。