「あ、あの。三時限目、体育でしょう?い、いっしょにしませんか?」
舌を噛みつつ猿鳶先生は、言い切った。

私は、そんな猿鳶先生の必死な所に一瞬で胸をうたれ、考える暇もなく、

「はい!喜んで!」
・・・と返事をしていた。


パァ!と目を見開きこちらを見つめた先生は、
「あ、ハイ!で、ではまた後で!」
と、軽々と体を浮かせ、スキップをしているような足音とともに去っていった。

その足音が聞こえなくなり、一息ついて、生徒の元へ、目を向けた。

みんな、口元がゆがんでいる。
眼鏡でよく表情をうかがえないのだが、確かに分かるのは、
 みんな、今にも笑い出しそうな顔をしているという事。

もしかしてみんな、私の幸せを喜んでくれているの?

もう一度、私は泣きそうになった。
うん。今年は、いい年になりそうだわ。

そう思って、気持ちを私は引き締めて、先生らしく、

コホン。とセキをついた。




「話がそれちゃったわね。さっきの問題の話に戻りましょうか。」

『そらしたのは誰だよ・・・。』
奥の席から聞こえた・・・。


気にしない。というか気にならない。

猿鳶先生と共同授業・・・

でへ、でへ、でへでへでへでへ・・・。

「せ、先生!」
と生徒が小声で注意する前に私は現実に引き戻された。

その理由はただ一つ。
小泉咲希が机にうつ伏せになっていること。

あの状態は・・・
100%寝ているということ!

――こんのヤロぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!

私は次こそ心の中で叫んだ。

少し恥をかかせてやろう・・・。

もう一度、コホンとセキをつき、私は言い放った。
「この問題、分かる人!!」

7,8人の手がきれいに上の天井むけてあがった。
いつ見ても気持ちいい。

そう思いながら、私は続けた。
「小泉さん。この問題といてみて?」

と、窓の外から遠く離れて回っている風車を見ながら私は言った。