床から血色の悪い手がにょきにょきっと伸びてきて、二戸 梨杏の右足を掴んだ。





あまり体温の感じられない手の感触。







頭のてっぺんまで寒気がゾクゾクと走る。





ギョッと驚いて目を瞑る二戸 梨杏。






店員の壊れるような笑い声が聞こえる。







「後方よしっ!では…なかったですね?ハッ…ハハハ」






二戸 梨杏がゆっくりと後ろを振り返った。






そこには、落武者のようなザンバラ頭の髪の毛で鼻から血を流している店員の姿があった。




まるで、お化けを見たかのように驚く二戸 梨杏。






二戸 梨杏の右の足首をしっかりと掴んでいる店員。





店員は何か勝ち誇った気分がしてニヤリと笑った。





「お嬢さん、逃げちゃいけませんよ!ぜっ、全部、この耳で聞いちゃいましたからね、私――」