数分後にイタチは今までに聞いたことのない、これからも聞かないであろう凄まじい断末魔をきいた。

そのオトが止むと木の影から紅が戻り、落ちていた頭巾を拾うと静かに被った。

すると、また生き生きとした優しい瞳に戻り、笑顔を浮かべた。

『イタチさん、これあげるね。』

それは、カゴ一杯のパンだった。

「あの…これ、おばあさんに届けるのでは…?」

『ううん、私知ってるの。ここにはおばあちゃんは住んでいないことを。義母さんは、嘘を言ったことを。』

「え?」

少し寂しそうに紅は微笑むと、イタチにカゴを渡した。

『うふふ。だから、あげる!皆で食べてね。じゃぁ、私帰るからバイバイ。』

小さく手をふり、走り去ろうとする紅にイタチはきく。

「あのっ!お嬢さんはなんなんですか?」

『…私は、鬼。お母さんが鬼だったの。この頭巾のおかげで私は、人でいられるの。』

「そうだったんですか…。」