「…バカじゃないの?」

私が今まで聞いたことないくらい低い声で、蛍が言った。



「同情されたくないって何よ…あたしは大輔のこと好きだよ。でもそんな簡単に分かり合えるとは思ってない! 分かろうとしてるんじゃない。それを同情って言うのは最低だよ」


「ほ、蛍?」


「両親が離婚して何が恥ずかしいの? 仕方ない事情があったのかもしれないじゃない!! そんなこと言うなんて、大輔の両親にも野依ちゃんにも失礼だよっ…」



そう言うと、蛍は泣き崩れた。


私は蛍の背中を優しくさすりながら、大輔を睨んで蛍の代わりに言った。



「蛍から聞かなかった? 7歳上のお姉ちゃんと二人で住んでるって」


「……」


「12歳の時両親が離婚してお姉ちゃんと離されそうになったの。その時にお姉ちゃんが『蛍はあたしが引き取る』って言ったから両親と離れて一緒に住んでるのよ」


大輔が蛍を見つめた。



「蛍はお姉ちゃんも大好きだけど、ずっと仲良し夫婦だった両親も大好きだったから、離婚したのも事情があるんだって受け入れようとしてるのよ」


「……!」


「蛍に同情なんてできると思う? 今のアンタの気持ち、一番理解できるのは蛍よ」