一瞬、大和が真剣な顔になった。


「嫌われるも何も…俺お前以外にキスしねーし」


「何それ、大和好きな子いないの?」


「…俺は好きな奴以外にキスしねーよ」



大和にじっと見つめられて、またバクバクしてきた。



「ふーん。そうなんだ」


私以外にキスしなくて、好きな奴以外にキスしないってことは…今は好きな子いない、ってことだよね。




何か安心して、私は強く抱きついた。



「葵?」


「よかった、大和好きな人いないんだ!」


「は?」


見上げると、驚いた顔の大和。


「だって、好きな子以外にキスしないんでしょ? 私以外にキスしないってことは好きな子いないんじゃない」


「……どんだけ鈍いんだよ」


大和はため息をつくと、私の頭を撫でた。



「…ま、まだ俺が焦りすぎてんだよな…」


「え? 何?」


聞こえなくて首をかしげると、触れるだけのキスを落として。



「今はまだ教えるだけだけど。長期戦で行くから覚悟してろよ、お姫様」


そう言って…王子様みたいに微笑んだ。



…その笑顔に見とれて、バクバクが激しくなったのは言うまでもない。