アクリスには悩む理由があるようだ。

「あなたは、ロッツォという方を知っていますか?」

「え……あ、あぁ。」

彼女からロッツォの名を聞くとは思わなかった。

「フィル王子は今は、王権を剥奪され、ルーゼンの騎士として遣われているとか……。」

「そうだが……?」

アクリスは戸惑いを隠せない。

「ロッツォはアタシの兄なのです。」

レイドは目を点にして驚いた。

鳩が豆鉄砲を食らった顔をして。

「兄様はあの方に、あの王族に酷い遣われ方をされていました。フィル王子は自分より身分の低い人間を利用し、奴隷のように扱う。アタシはあの方が大嫌いですの。」

「アイツは今はそんな奴じゃない!アイツは心変わりした。今は、ルーゼンを愛する騎士、家族としてよく働いてくれている。」

「それは、あなたを必死で助けようとした姿を見ればわかりますわ。しかし、アタシはあの方を許せない。」

「だったらフィルを助けたのは何故だ?」

アクリスは黙り込んだ。

レイドの言う通り、何故フィルを助けたのか。

それほど嫌いなら……。