「そういえば、私、なんでここに?」

彼女は思い出したように、辺りを見回しそう言った。


 「?君、あの建物の中に。」

少し疑問に思いながらも、古びた、闇の建物を指差し、ルイは言った。


が…


 「?建物?」

彼女は首を傾げて建物を見る…

何も知らないというように…


不思議に思ったルイ。


 「覚えて、ないのか?」

 「何も…」

彼女は何も覚えていないようだった。

(記憶を失っているのか?)

そう不意に感じた。

(あいつがあそこに閉じ込めてたっていう事は、何かあるんだろう…。ここに置いて行く訳には…)


 「あの…」

考え事をしていたルイに彼女は声をかけた。

 「?」

 「あなたはノワールから力を?」

 「?ノワール?」

彼女の口からその名前が発せられた。


 「えぇ。あなたの力から、ノワールの面影が見えるの。」


(俺に力を与えたあいつの名は…ノワール…)

そうルイは感じた。


 「君は、そいつの事を知ってるのか?」

彼女へと期待を込めた瞳を向ける。


 「いいえ。何故か…記憶に残ってたんです。」

しかし、彼女は首を横に振った。

少し残念そうに…


 「そうか…」

すこし残念だが、あいつの名前を知る事ができた。


あいつの名は…ノワール…


俺に力を与えたのは…

村を血の海にしたのは…

全ての者を殺したのは…


…ノワール……