「人ごとだけど俺なりに心配してるんだけどー?」

「わかってるよそのくらいー」


半泣きの顔で昭平に言い返すと、昭平も千恵子も苦笑を漏らした。


昭平が私を心配してくれていることくらい分かってる。今までで一番迷惑かけているのも昭平で、私が泣き叫ぶのを一番見て来ているんだから。


そのくらい分かってる。

千恵子と付き合うことにだって昭平は躊躇っていた。敢えて私にはそんな事言わなかったけど。

お互い好きな事くらい傍にいたらわかるっていうのに気を遣ってどっちも告白しないんだから。


傍に居る私が苦しむだろうと変に気を遣うような男だってことくらい分かってる。わからなければいいのにと思う程にわかってる。


結局私が後押しして付き合ったんだからもっと神様みたいに私を崇めて欲しい。


今与えられている「幸せ」と「苦しさ」でいっぱいいっぱいだ。

言葉に出来ない感情が募ってほろほろと零れだした涙を、千恵子が何も言わずにハンカチで拭ってくれた。


「昭平、豊海をいじめないでよー」

「へーい」


千恵子の言葉に、昭平は気にした様子もなく両手を頭の後ろにやって私から背を向けた。

泣きたくなんかないのに。


ハンカチで残った涙を自分の手でぎゅっと擦ってから千恵子を見て「ごめん」と呟いた。


「倒れるよりも安心」

「そりゃそうか」


ちょっと涙を流したら気分が楽になったのか、千恵子とくすっと笑みを零し合ってから力を込めて手を壁から離して学校に向かって歩き始めた。