・
「なんだこれ……」
いつものごとく、豊海がぶっ倒れて保健室の常連になっているとき、昭平に半笑いで持ってこられた手紙を読んで呟いた。
『帰りの荷物集めてたらこんなの出て来たよ』と昭平がにやにやしていた意味がやっと分かった。
バカの癖に遺書もどきを残すなんて何を考えているのか。いや、バカだから遺書という発想があるのかもしれねえ。
これを見つけて読んだあげくに、面白そうに俺に手渡す昭平も昭平だと思うけど。
「ま、ただのラブレターだよな……」
ほんっとバカじゃねえの。
自分で書きながら鼻血や吐瀉物で手紙汚してどーするんだこいつ。
保健室のパイプ椅子の背もたれにゆっくりともたれかかると、ギイっと音が微かにした。
目の前の豊海はすやすやと眠っている。このまま……目を覚まさないんじゃないかと思う程、穏やかな顔で。
昼休みにキスしてぶっ倒れたとは思えないほど幸せそうな顔をして。
「後悔なんかするか、バカ」
お前の方が後悔するだろう。そう思っていた。今も、この手紙を読んでもそう思う。
俺は、お前が後悔する、そう思っていたって手放す気はないし、それこそ本当に殺しかねないほど思っている。
「なんでスキなんだろうなー」
はあっとため息を零して豊海の顔を見つめた。
十人並みの顔立ち。特にこれと言った特長もない。オマケにバカだし、変な体質まであるし。
俺がこんなに独占欲のある男じゃなかったら、こんな女は無理だろうなとつくづく思う。
自分がこんなに独占欲の塊だったなんて、知らなかったけど。