高城は普通で、普通ってそもそもなんなのみたいな考えに至らないほど私は普通じゃなくて。


裕子さんは高城に触れることが出来て、きっと今まで付き合った人みんな高城に触れてきて。

私は出来ないのに。
みんなたやすく触れることが出来る。

狡いとか悔しいとか、そんなこと私が想う資格がないことだって分かってる。


触れられないのは私で。
高城が触れられないのは私のせいで。


だけどなくならないこのもやもやした気持ちが、一層体調不良にさせていくんだ。

好きなのに出来ないことがこんなに辛いなんて思わなかった。出来ないことがこんなに悔しいなんて思わなかった。


どろどろの私の黒くて醜い嫉妬。
その全ての原因に関わる「好き」の気持ち。


好きなのに。
好きだけど。
好きだから。


こんな黒い私のまま死にたくない。
こんなにも醜い思いが原因で死んじゃったりしたら自分が辛すぎる。


「ふええ、ふあ、ふ、ふえ……」


ぼたぼたとただ零れる涙に、傍にいた看護師さんはおろおろとしてとりあえず私の背中をさすった。


こんな醜い感情で苦しいなんか嫌なんだ。
こんな理由で高城の行為を受け取れない自分も、高城に対してひどいことをしている自分も嫌い。


だけどこれ以外にどうしたらよかったの。