聞きたかった言葉。
誰かに言って欲しかった言葉。
それを震える声で遮った。

こんな変な体質で、好きな人の前でげろげろ吐き出したってそれでも良いのだと言ってくれたら良いなと思った。

そんな変な人いるわけがないと思っていた。


だけど今は何よりも聞きたくない。聞いちゃいけないんだ。


「お願いだから。もう、ほんとうに、ダメなの」


目眩がする。だけどここで倒れるわけにはいかない。吐きたいキモチもあるし、頭もガンガンと私の脳を揺らしてくるけど、今耐えたら終わりなんだから。


だから。


「嫌なの!死にたくないの!こんな辛いの嫌なの!」



ぎゅうっと目も瞑って、力一杯叫んだ。
小刻みに震える手を、誤魔化すように。

同時にぎりっと、肩に痛みが走る。

高城が、私の肩を掴んでいる高城の手に力が込められたんだと言うことはすぐさま分かったけれど、かといって何も出来るはずもない。


触れられた肩だけがやたらリアルに感じた。


「わかったよ、もーいいよ」


その言葉と同時に肩から離れた高城の手を、恋しいなんて思っちゃいけないんだ。

立ち去っていく音は耳に届いていたけれど、私は少しも動けなかった。瞳を開けることすらも。

ガラガラとドアの開く音が聞こえて、次第に遠のいていく足音を私から奪うように、ドアは自然に閉じられた。