「真奈」
優しい声で名前を呼ばれた。
「何よー。笑いにきたの?」
痛ーいとぶつぶつ言いながら私は、目の前に来た直哉を見上げた。
「見してみ」
「へ?」
「足。見せろって」
直哉はしゃがんで、固まる私の足を
ほらっと言って掴んだ。
「靴擦れだな。痛いだろ」
「………」
なぜか何も言えなくて。
なぜか、ドキドキして…
何も言えなかった。
直哉なのに。
直哉なのに……
「ちょっと痛むかもしんねーけど…」
そう言って直哉はポケットからハンカチを出すと、私の足の血が出ている部分を優しく覆ってくれた。
「よし」
「あ…ありがと」
「おう。ちょっとここで待ってろよ。望遠鏡だけ設置してくるから。すぐ戻ってくるから」
「うん」
直哉はニコッと笑って、私の頭を撫でた。
そしてひょいひょいと、軽く階段を上って行った。