―――午前2時、雨宿りは
傘が、壊れていたんだ。
使えなかったことは前からわかっていた。
「一緒に帰ろっか」
その一言が言いたかっただけ。
特に理由なんてなかった。
「少しくらい雨に濡れるのも気持ちいいよ」
彼女は持っていたスクールバッグを振り回しながら僕の手を引いた。
「それに湊くん。壊れた傘で女の子を送るなんてちょっといただけないかなぁ」
「なんで知ってるんだよー。」
「前に壊したって言ってたやつだったからー。」
ふふふ、よく見てるでしょ
っと、からかうように、持っていた傘の柄で僕を軽く小突いた。
「うわっ」
その拍子でよろけた、ふりをした。
乙海の方へ体を傾ける。
僕の手をとる彼女の手をぎゅっと引っ張った。
「…一緒に帰ろっか。俺の家に。」
こくり、と頷いた彼女は
「さむい。あっためて。」
細い指で僕の手をぎゅっと握った。