蒸し暑い夏のことだった。



生活感が見えないベッドとCDコンポしかない12畳間の部屋。

「さむい。あっためて」

真夏だというのに小さく震えるきみに毛布をかけ、隙間から伸びる細くて白い指先にキスをした。

きみはいつもと変わらない、穏やかな笑顔を僕に見せて


「ぜんぶ、嘘だったんだね」


なんて涙を流したんだ。


「答え、聞きたい?」


そう僕が訪ねると、きみは首を振った。


「いま湊が嘘って言っても、本当って言っても、あたしは黙って泣くしか出来ないよ」


"俺も同じだよ"

声を殺してすすり泣く彼女を毛布の上から抱き締めて、耳元で呟いた。


「…ごめん、乙海」


次第に大きくなっていく泣き声が、なにもない部屋に響いた。


―――16歳の夏。これが僕の失敗。




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