アザムはリビングに入り、相変わらずソファでブランデーを傾けているベリルに苦笑いを浮かべる。

「こいつが迷惑をかけて本当にすまん」

 ロメオは息子を隣に立たせて頭を押さえた。

「ご、ごめんなさい」

 そんな2人にグラスを小さく掲げ、しれっと応える。

「大事なければ良い」

「それと……」

 男は言い出しにくそうに声を詰まらせた。

「しばらく、フリーにさせてもらえないだろうか」

「! 何かあったか」

「実は……妻が病気で看病したいんだ。契約は破棄して、仲介のあった時だけの支払いに戻して欲しい」

 ベリルの瞳が少し曇る。