彼女が振り返る。
きょとんとした顔で俺を見る。
「あ、あの…さ、」
呼び止めたはいいが、恥ずかしくて言い出せない。
「○○高校って、凄い頭いいよね!」
「普通だよ」
「俺的には!」
「そう。頭悪いんだね」
「…」
結局別の話をしてしまった。
しかも、きっと呆れられたに違いない。
会話が続かない。
「どこ受けるの?」
今までに一回も
俺に喋りかけた事のなかった彼女が、
今初めて俺に喋りかけてきた。
「あ、××高」
「じゃあ高校違うんだね」
…それはどういう意味だ。
『違う高校なんだな』というだけの意味か、
『違うんだ、寂しい』的な意味なのか
まあ彼女に限って、『寂しい』はないだろう。
俺はそう思い込むことに勤めた。
「そっ、そうだね」
「うん。じゃあ私もう行くね」
今度こそ彼女が去っていく。
結局俺は彼女に、思いを伝える事ができなかった。