「あ!舞衣~!!」


懐かしい声とともに聞こえてきたのは

かつて俺が恋したあいつの名前。


「お、成瀬さん来た!」

マサが言った。


「ごめん、急いで帰国してきた!」

「も~連絡ないから来ないかと思った」

「ごめーん」


手を顔の前で合わせて謝りながら

成瀬は宴会場に入ってきた。


変わっていない。

上品なところも、おしとやかなところも。

髪の長さも顔も、声も全部。


俺に気付かないまま、

成瀬は女子の間に座る。


あの時

中3の最後の日、返事も聞かずに去ったのは俺。

今更喋りかけれるわけもない。


俺は成瀬に背を向けた。


「なあ、ヒロ。いいのかよ?」

「あ?何が。」

「成瀬さん。来たぞ。」

「来たから何?」


かつて俺の恋を応援してくれた悪友、政宗は

ため息をつきながら胡坐をかく。


「お前、卒業式の日に告ったんだろ?」

返事をしない俺に、マサは話を続ける。

「返事聞かずに帰ったんだろ?」

「だから?」

「今更でも遅くねえよ。成瀬さん、絶対お前の事好きだった。」