「ひっさしっぶり〜。」

振り向くと、そこには親友の姿があった。

「無視して悪かったな。事情・・知ってるんだっけ。」

いつものようにヘラヘラ笑顔を浮かべている慎也に、

「知ってるよ。キスシーン撮られたまぬけくん。」

「もう言うな。自分でも情けないんだから。」

アハハハハ

いつもの日常が帰ってきた。

「ん、そういえば、僕と話しちゃだめなんじゃなかったっけ。」

事情を知っている僕は、ふと、疑問に思った。

「いや、今日の朝、学校の玄関の所で里穂が謝ってきて、写真も俺に渡してくれて、[ごめんなさい。]だってよ。今はまだひろみが来るのを待ってると思うぜ。」

[そうか。]と相づちを打っておく。

「あと、[ゴメン]って祥に伝えてほしいって。」

(やっぱり、あれで良かったんだよな。)

心の重荷がとれたような気がした。

「おはよう。」

「おはようございます。」

愛花とひろみの二人が、僕たちの会話に入ってくる。

「四人揃うのも久しぶりだの。」

三人を見渡して感慨深く思う。

「やっぱこの四人は最高だ。」

慎也が唸る。

「ええ、そうですね。」

ひろみが頷く。

「やっと揃った。」

愛花は泣きそうなぐらい喜んでいる。

「今日の合唱コンクールがんばろうぜ。」

みんなに呼びかける。

「もちろんやるからには、勝利だビクトリィィィ。」

ハハハハハ

僕たちの笑い声が教室に戻った。

秋の深まる空に歌声が登っていく。

結果は2位だった。

やっと長い長い秋が終わろうとしている。

秋の天気のように、コロコロと色んな事件が起こった。

でもその嵐のような事件たちが抜けて、僕はとても成長できた気がする。

秋は草木が実り急激な成長をするように、僕たち人の心も実らせる力があるのかもしれない。


fin