しばらくして、うつむいたままだった、愛花が

「いきなりなんて・・・恥ずかしい。」

上げようとした頭をまたうつむける。

「その恥ずかしさも、もらってあげる。」

その言葉を聞いて顔を上げた愛花の瞳には、僕の姿が映っていた。

「ちょっと待って。」

初めて遭遇する状況に驚く愛花に、

「いきなりはだめみたいだから先に知らせてみたけど、大丈夫。」

一応訊いてみると、、

すねたかおをして、

「いじわる。断らないってわかってるくせに。」

覚悟を決めたようだ。

愛花が顔を近づけてくる。

今度は二人で顔を近づけ、お互いの唇を重ね合わせる。

しっかりと感じあい。

まだ

まだ

そうしてようやく、離れる。

時間的には、そんなに長くないのに、その何倍も長く感じた。

離れた後は、お互い背を向ける。

血が頭に上って、なかなか落ちてこない。

「緊張全部とれたかな。」

僕が訊くと

「うん、ありがとう。」

そう言って立ち上がり、残りのおたよりを配り終えると、自分の席に戻った。

改めて恥ずかしさがこみ上げてくる。

そのまま何も話さずに時間が過ぎていく。

少しずつ登校してきてみんなの顔がそろっていく。

「おっはよ〜。」

うるさいぐらい大きな声で後ろから挨拶をしてくる聞き覚えのあるバカの方に振り向く。