秋空

時計を見ると、登校時間の五十分前だった。

(さすがに来るバカはいないか。)

あまりにもする事がなかったので、校舎を回ろうと思って席を立ち、教室のドアに向けて歩き出す。

ガラッ

僕があける前に、扉が開いた。

正面に立っていたのは、長身のかわいらしい女の子。

｢お、おはよう。｣

いきなりの出現に驚いて声が詰まる。

愛花も誰も来てないと思っていたのか、唖然とした表情が見られる。

｢お、おはよう。｣

ぎこちない挨拶を交わして、外にでようとしていた僕は教室に戻り、愛花は入ってくる。

二人だけ時間が流れ始めた。

｢お、おはよう。｣

｢おはよう。｣

ぎこちない僕の挨拶に、愛花は挨拶を返す。

僕は後ずさりして、教室の中心である自分の席に座り。

愛花は紺色の鞄を机の上に置く。

｢早いね。｣

とっさに訊かれて、

｢愛花も早いけど、なんで。｣

聞き返す事しかできない。

お互い、学校に来る時間が異常なほど早いので疑問を持ってしまう。

普通は訊かれた僕から答えるべきなのだが、思わず聞き返してしまったので、愛花が先に答える。

｢緊張してたから、早めにきて緊張をほぐそうと思って。｣

顔がこわばっている。

(緊張してるんだろうな。)

｢祥は、なんで。｣

当然だが次は僕が答える。

｢昨日、お前と別れた後に里穂と話をしに行ったんだ。絶対許さないつもりだったのに、許したんだ。｣

僕は愛花の方向を見ずに話し続ける。

｢あいつ、最後に自分のしたことを後悔して、自分を責めてた。｣

僕は愛花の方に向き直って。

｢あの時、僕は責めれば良かったのかな、許して正解だったのかな。どっちだと思う。｣

当事者ではない愛花に訊くのは無茶だと思ったが、訊かずにはいられなかった。

愛花は少し考えた後に、

｢祥が里穂さんの事を思って選んだんだからそっちが正しいと思うよ。｣

少し気持ちが癒されたような気がした。

そして正しい選択をしたようにも思えた。