家に着くと時計は九時を過ぎていた。

両親からの説教が終わる頃には10時に近づいていて、僕はすぐにベッドに横になった。

そのまま、今日の出来事を振り返る。

(まずは告白したっけなぁ。)

今まで生きてきた短い人生の中で、一番うれしい出来事だったかもしれない。

たくさん愛花を感じることができた。

思い出すだけでも、赤面して体温が上がる。

(不良に殴られた傷痛むな〜。)

手のひらでお腹のあたりをこすってみると、

「うぎぃ。」

思わず声がでるほど、強烈なダメージになっていた。

[よく耐えられたな。]と自分でほめたくなる。

(やっと本音をぶつけて、解り合った気がした。)

いままでのイジメのような仕打ちは、ゆがんだ愛情表現だった。

とは言っても、どう考えてもやりすぎだと思うけど。

結局丸く収まって良かった。

目を閉じると光のない世界が広がる。

いつもは何もない無の境地に、今日はいろんな映像が一瞬、一瞬映っては消えてゆく。

こんなに頭が冴えていて心が落ち着かないのは初めてだ。

冴えた頭でまた物思いにふける。

何かを考えていた方が眠くなるような気がした。

僕の意識は、そのまま深い奥底に落ちていった。





翌朝

いつもより相当早く目が覚めた。

朝食を食べて、用意をして、学校へ向かう。

体が痛い。

重い体を支えて玄関のドアを開ける。

最近は一人で学校に行っているので、慎也を待たずにすぐに学校に行くことが癖になっていた。

まだ誰も歩いている人はいない。

学校に着いても、誰かがいる気配はなかった。

玄関は早くから開いているので、学校に入ることはできた。

足音が校舎にこだまする。

夜の学校も不気味だったが、明るいのに誰もいない学校も不気味だ。

「寂しいな。」

自分で自分に話しかける。

静かすぎる廊下を歩き、教室のドアを開ける。

ガラッ

「来てないか。」

改めて誰もいないことを確認する。